
御在所本谷
梅雨のような天候が続いた5月下旬、信州から少し足を伸ばして御在所へ向かった。
初日は本谷ルートから山頂を目指した。沢沿いのルートではあるが、靴を濡らすこともなく登ることができ、部分的にはマーキングもあるバリエーション入門ルートだ。
涼やかなナメ滝を横目に高度を稼ぐと、チョックストーンの不動滝。ここは登れないので、少し戻って右岸の巻道へ。


急斜面の巻道を進むと、力強く根の曲がった天然の杉が点在していることに気づいた。そのほとんどが花崗岩の大岩を抱きながらうねりを伴って地面に根を張っている。その成長過程を思うと、生命力の強さに感心してしまう。


そもそもスギは、「直木(すぐき)」が由来で、これは幹が直立して成長することに由来しているらしい。そして、太平洋側にはオモテスギ、日本海側にはウラスギが分布していて、前者は由来の如き直立した樹形で、後者は主に多雪地帯に分布するため枝を分岐させた樹形となり遺伝的にも分化しているようだ。
詳しく確認したわけではないが、御在所に点在する杉の多くはウラスギの特徴を持つものが多い。御在所周辺は本州の最狭部であり、日本海側と太平洋側の気候を併せ持つ興味深いエリアである。
さらに進むと、特徴的なジョーズ岩。右手に懸かる鎖場を登ると源流の様相となり、見上げると真上をロープウェイが行き来する。最後は見晴らしのいい大黒岩に出て遡行終了。


賑わう山頂を経由して、下山は国見尾根から。国見岳周辺からは藤内壁の全体が見渡せた。冬季になればここにも氷の筋が懸かる。風や染み出しなど数々の要因があるのだろうが、初めて来たときは照葉樹の森から登り始め、山頂の標高も1200mをわずかに超える程度の山に、氷瀑があるということがにわかに信じ難かった。




最後に天狗岩とゆるぎ岩で撮影大会をして、急な尾根道を下山した。
鎌ヶ岳
朝まで雨が降っていたので、翌日は藤内壁の易しいルートは諦めて、鎌ヶ岳へ。登っていくうちに青空が覗きだし、雨上がりの澄んだ空気に木々の緑が眩しいほどに力強く感じられる。花崗岩の山の宿命か、風化してマサ化した土壌は、大雨が降ればどんどん侵食されていってしまう。周辺の全ルートがこうした問題を抱えており、対処が追いついていないのが現状だ。


山頂からは昨日登った御在所岳と、小麦と水田のパッチワークの平野が印象的だった。


見慣れぬ地形に、見慣れぬ植物に心躍る2日間だった。
結局、2日間の行動中に、雨は落ちてこなかった。